生成AIの認知度は96%、73%の企業が利用経験あり
生成AI(Generative AI)の活用が急速に進む中、国内企業の利用状況や課題認識を探るべく、大手コンサルティング会社が2023年秋に調査を実施しました。その結果、生成AIの認知度は96%に達し、73%の企業が何らかの利用経験を有していることが明らかになりました。この数字は、わずか半年前の調査と比べても大幅に上昇しており、生成AIへの関心の高まりと普及のスピードを如実に示しています。
87%の企業が生成AIの活用を検討・推進
特筆すべきは、87%の企業が生成AIの社内・社外利用を実施または検討中という点です。活用状況の内訳は、社内業務で活用中が14%、具体的な案件を推進中が22%、検討中が24%となっており、生成AIへの関心の高まりが実際の取り組みに繋がっていることがうかがえます。この結果は、生成AIが単なるブームではなく、企業のDXを推進する重要な技術として認識され始めていることを示唆しています。
テキスト生成系のユースケースが主流、幅広い業務での活用も
活用領域としては、要約や文章執筆といったテキスト生成系のユースケースが過半数を占めています。これは、自然言語処理の分野でAIの性能が飛躍的に向上したことを背景に、比較的導入しやすい領域として注目されているためと考えられます。一方で、画像生成やプログラムコードの生成など、幅広い業務での活用も視野に入れられており、生成AIの可能性は多岐に渡ります。
人材不足が課題に、AIリテラシーの向上と人材育成が急務
一方、課題として62%の企業が「必要なスキルを有する人材の不足」を挙げており、AIリテラシーの向上や人材育成の必要性が浮き彫りになりました。生成AIを効果的に活用するには、技術的な理解に加え、ビジネス課題に対してAIをどう適用するかといった観点が重要です。単にツールを導入するだけでなく、それを使いこなせる人材の育成が鍵を握ります。また43%の企業が2024年3月までの本格導入を目指しており、今後さらに導入が加速していくことが予想されます。人材育成の取り組みを急ぐ必要がありそうです。
業界や職種による活用状況の差も明らかに
業界別に見ると、情報通信業はAI活用をリードする一方、小売・流通業界では検討段階にとどまるなど、業種による温度差が見られました。情報通信業ではデジタル化が早くから進んでおり、AIへの親和性が高いことが背景にあると考えられます。一方、小売・流通業界では、店舗運営などのフィジカルな要素が強く、AIの適用にまだ課題があるのかもしれません。
また、コミュニケーションや専門知識を要する職種で活用が進む一方、製造や物流などのフィジカル領域では導入が遅れ気味です。テキストデータを扱う機会が多い営業やマーケティングの分野では、生成AIの恩恵を受けやすいのに対し、現場の作業が中心となる製造や物流では、AIの適用にハードルがあるのかもしれません。ただ、今後はこうした領域でもAIとの協働が進むと予想され、業務プロセスの見直しなども含めた検討が必要になるでしょう。
生成AIは企業のDX推進の鍵、人材育成や環境整備が急務
今回の調査結果から、日本企業の間で生成AIが急速に浸透しつつある実態が明らかになりました。生成AIは業務効率化や新たな価値創出に大きく貢献する可能性を秘めており、企業のDX推進における重要な柱の一つと言えます。一方で人材面の課題も浮上しており、効果的な活用に向けた環境整備が急務です。AIリテラシーの向上と人材育成に加え、活用を支えるガバナンス体制の構築など、多角的な取り組みが求められます。
生成AIがビジネスに革新をもたらす変革の波は、まだ始まったばかりです。企業には、この波をチャンスと捉え、戦略的にAIを活用していくことが求められます。生成AIの動向から目が離せません。
引用: 生成AIに関する実態調査2023 秋
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/generative-ai-survey2023_autumn.html